12/14|ボクらの時代

池松壮亮 × 妻夫木聡 × 石井裕也

石井裕也監督(以下石)「今年、妻夫木くんとは140日くらい、池松くんとは100日くらい一緒にいる、3人で相当飲んでる」
妻夫木さん(以下妻)「家族より会ってますね」

(妻夫木さん(デビュー作?・ジョゼと虎と魚たち・若者たち)、池松さん(ラストサムライ・紙の月)、石井監督(川の底からこんにちは・舟を編む)それぞれの経歴を紹介→ぼくたちの家族・バンクーバーの朝日と続けて3人で仕事をした)
 
石「(池松君)痩せたね」
池「夏にちょっと体重減って、舞台やったら減って、徐々にもどっている」
妻「みんなバンクーバーの朝日で太ったらしい。部活ノリで食べることに抵抗がなかった」
石「池松君食うの好きだもんね」
池「好きっていうか、あったら食っちゃうみたいな」
石「3人で飲んだあとはつけ麺大盛り食べて帰るのが、通過儀礼じゃないけど、明日から頑張ろうってなる」 

池「ぼくはまだ(夜食べても)大丈夫」
妻「30すぎたら食ったら食った分だけ太るからな!」
石「すごいダイエット法みつけて。ノロウィルスになるっていう」(一同笑)
妻「すごい体に悪いですね」
石「デトックスっていうか、全部出るから」
妻「逆にノロウィルスどうやったらなれるの?」
石「つり革なめたり(笑)」

石「最近、フライドチキン4個食って(そのせいで吐いて痩せた)。ほらそういうのあるじゃん、俺はまだ(食えるみたいな)、何個食えますか?」
妻「5個はいけますかね」
石「ほら、今度やりましょう」
池「誰が一番いけるか」
石「池松君10個くらいいけるよね」
池「いけますね」
石「誰が一番食えるかみたいなのが同世代の男(のノリ)なんでしょうね。(どこまでいけるか)試したいみたいなところがある、そういうところないですか?俳優として」
妻「あるある、結構ある」

妻「もともと監督志望だったんですか?」
石「大学に入る時に決めた。大変だった。池松君も大学で映画とかやってたから…」
池「大変ですよ」
妻「お金がない時期とかあったんですか?」
石「その方が多い。自信はあるのに世の中から求められなかった状況には絶対もどりたくない、世の中すべてに怒っていた、年齢(のせい)だとは思う」

妻「オーディションに受かったのは16歳のとき、チャラチャラしていた。バンドでハイスタのコピーとかやってたり。スケボーは中学のときにやってた」
石「対して池松君はガキ大将、オラオラ系」
池「ガキ大将って感じじゃないけど…早くから(仕事を)始めちゃったんで、そう見られてる感じもあった」
石「今のイメージと反した…」

妻「こないだバラエティ番組出た時に、アンケートで「池松さん酔うと脱がれるんですよね」って。どんなイメージなんだろうなと思って(笑)」
石「サービス精神っていうか、そうしないといけないと思った訳でしょ」
妻「(池松君は)気い使い屋さんだよね、一見そう見られないと思うけど
石「癖だよね、小さい頃から大人に(囲まれてたから)」
池「そうなんですよ、ちっちゃい頃から発言出来ずに、見るしかない、この大人は面白いとか信用できないとか」

妻「初めて芝居したときから、一生自分がこの仕事やると思った?」
池「一切思ってない、10年くらい思ってないです。18くらいで東京に出てくる時にある程度(この仕事をする)覚悟を決めたくらいで」
妻「やっぱり野球選手になりたかったの?」
池「なりたかった。ひとついいなと思うのは、野球とかサッカーは中学くらいでプロになれるかなれないかわかるから、見切りをつけやすい。で、(俳優業に)片足をつっこんでたので、やべえこれしか残ってないと。でも、試せる場所がそこだったんでしょうね。年に2回ずつ試して、行けるんじゃないかと思っちゃってた、福岡で文化の差もあるから、テレビ見て俺の方がいいと思ってた」
 
妻「勝ち負けとかはある?」
池「文科系じゃないから勝ち負けで生きてきたし、これからもそれしかできないんじゃないか、石井さんもそういうタイプ」
妻「それは対人(他人)?対個人(自分)?」
池「全部。世界に対峙したときの全部」
妻「石井さんもそうですか?」
石「うん、特に仕事は。人生は勝負じゃないと思ってて…生まれてきちゃったから。仕事は自分で選んでるから勝負だろうなと
池「妻さんもそういうところあるじゃないですか」
妻「昔は有名になりたいとか、評価されたいと思っていたけど、今はそういうのは全くなくて、今回自分がどういう顔をしたのかということが気になる」
石「がむしゃらにやるからその熱が映ってますよね」
妻「石井さんが「妻夫木さん、顔ヤバイです、嫁にみせちゃいました」って(笑)」

(バンクーバー映画祭など海外で『バンクーバーの朝日』で妻夫木さんがバントで走る時の必死な顔が観客の笑いをさそったことを受けて)

妻「こっちは笑わせるつもりも泣かせるつもりもなくやってるんだけど、けらけら手叩いて笑ってて、そんなに笑う所?って見たら、ほんとだ、面白いかもって思ったら嬉しくて泣けてきて。喜劇ってこういう風にできるんだなって思った。狙ってやることって本当に面白くない、真剣にやって、滑稽な姿や一生懸命な姿が面白おかしく映る瞬間が世の中にはいっぱいあるんだなと」
石「台湾でも同じ反応だった、アジアでも。最初バントして、1塁行くまでは笑う、2塁行くときも笑う、でも2塁のリードでなんか泣けて来る」
妻「1、2、3塁でどんどん成長してるわけですね、人も物語も。そこまで撮ってるときから考えてたんですか?」
石「考えてないすね(笑)。でもそれまで一生懸命になれてない人が、一生懸命になってく瞬間、そのさまってすてきなんですよね」

石「妻夫木さん現場でスタッフとご飯食うのって決めてるんですか」
妻「決めてないですよ、でもそういうときに生まれる事もある、食べてる時って解放することが多いから」
石「たしかにそう、だから俺食ってるとこ見られるの嫌いなんですよ」
妻「それで食べないんだ。女性できれいに着飾って美に対して追求してる人でも、食べ方汚いとすごい落ち込む。食べてる流れで話すと違うものが生まれるような気がする。ガキの頃はデートといえば公園や映画館だったけど、大人のデートはご飯に行くって変わってる、(その人を)知ろうとしてるんじゃないですかね」
池「同じものを食うっていうのもいいんじゃないですか」
妻「それもある。だから鍋とか大好き」


妻「結婚願望はあるの?」
池「あります。石井さんがよくいう、結婚は男が決める事じゃないというのもあるけど、いつでもいい、時期に執着はない」
妻「20代にするものだと思っていたが30超えたらズルズルこの年になった。壮亮じゃないけど、いつでもいい」
池「じゃあ今結婚してくださいって言われたら?」
妻「ちょっと考える」(一同笑)

石「池松君に出会った頃は早く結婚したほうがいいと言っていたが、今はいつでもいいと思う
妻「監督からみて役者は結婚したほうがいいと思う?」
石「関係ないんじゃないですか」
妻「まわりの役者がみんな結婚していて、同年代で独身だれもいない、瑛太のいいパパぶりなどを見ていると。自分にとっていいのかはわからないけど、いいことなんだろうなと思う。家族との幸せも楽しいもんなんだろうなと」

池「結婚という形じゃなくても、この先自分だけのために頑張るというのは嫌、そんなの飽きたし、男たる者守るものひとつないと頑張れないんじゃないかと」
石「映画のために生きようってのは俺も抵抗がある」
妻「俺、映画のために生きようタイプだったんだけど、ある俳優さんに、どれだけ素晴らしい賞をもらっても、どれだけ大ヒットしても、みんなから愛される作品を作ったとしても、死ぬ間際に思い出すのは自分の芝居ではなくて家族だ、と言われてなるほどなと思った」
池「石井さんがよく言ってたことで、映画より大切な事があるから映画をやっている、と。あ、これだなと思って。映画の先を信じているからこその出来る事、じゃあ映画で何ができるかっていうことを探している感じがしますね」

石「池松君の両親はいいね」
妻「お父さん格好いいよね、厳しかった?」
池「厳しかったですね、相当殴られて育ってます、父ちゃんには記憶の中では2、3度。1回目は姉とケンカしててはじめて手を出した時にボコボコにされた。2回目は、風呂上がりの父ちゃんにボコボコに蹴られて家を出された。そういうのありますか」
妻「中2のとき、父親に将来何になるんだ、2週間後までに考えてこいって言われて、プロスケーターになるって言ったら、そんなもんになれるわけないだろとすごい怒られた。でもその時に、なんでもいいからプロになれと言われたことは鮮明に残っている

石「佐藤浩市さんが妻夫木さんくらいの年齢が俳優として難しいと」
妻「難しい事の方が面白くないですか」
石「やってる時に面白さを感じてる?」
妻「やってるときは全然面白くない、苦しいだけ。昔は全部が新鮮で楽しいだけだったけど、今は役作りしてるときから苦しいどういう風に演じようと思っていることからそれ違うんじゃないかとか、全否定から始まっていくから。知識を得るっていいことだけど、残酷だなと本当に思います」

妻「休み欲しいとかおもったりする?」
池「しますね。一方で、趣味もないですし、仕事しかすることない中で、ここ2ヶ月くらい作品に入る事をストップしていたけど、ずっと腐ってましたね」
石「どういう腐り?発酵?廃人?(笑)」
池「ジャンプするためにしゃがんでる時間なんでしょうけど、やっぱり生き甲斐ってこれしかないと。色々考えるじゃないですか、俺じゃなくてもあの人のほうがいいんじゃないかとか。考えた末に、つけ麺と一緒ですよ、じゃあお前どこまでできるんだ、と」
石「やっぱりそういう感覚あるよね、人生腕試しみたいな」

石「今日たくさん喋ってたしね」
池「今日一番喋ってたんじゃないかな」
妻「今迄テレビ出た中で台詞の次に一番喋ってたんじゃない」
池「(一緒に居る)人によるんですよね」
妻「VS嵐でたときは5言くらいしか喋ってない(笑)」


(意訳や省略したところも、完全な書き起こしではないです)

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